オレは、空港に降りたって、迎えのリムジンに乗る。
リムジンは音もなく滑り出して、陽が傾き始めたドイツの田園風景を縫うように進む。
“今宵の宿”である「ポッキー・カール・オープンエアー」へ向かうリムジンの車内で、オレは冷えたギムレットを飲む。
日本からの長旅の疲れで、いつしかまどろんでいたようだ。
運転手から到着を知らされ、夢の世界から、現実に引き戻される。
リムジンを降り立った俺の前には、降るような一面の星空が広がる。
「ポッキー・カール・オープンエアー」の支配人が、控えめな笑みを浮かべ、オレを出迎える。
「おめえさま、よう来なすっただ」
ホスピタリティ溢れるポッキー・カール流だ。
「予約してあるKingorawだ」
「へえ、最上級のスイートを、用意してあるだよ」
支配人自ら、オレのスーツ・ケースを持ち、案内してくれる。
そこは「トウモロコシ畑」と見まごうばかりの「トウモロコシ畑」だ。
その一角に荒縄で囲った「スイート・ルーム」がある。
堂々たる「わらのダブル・ベッド」が嫌でも眼に付く。
「おめえさま、まんまの用意が出来てるが、どうなさる」
支配人は、50メートルばかり離れたところのテント張りの「炊き出し所」のようにも見えるレストランを指さす。
「いや、疲れてるんだ。今日はおとなしく早めに寝るよ」
支配人が離れていった後、オレはタキシードと蝶ネクタイのまま、わらのベッドに入る。
枕のところに「火の用心」のハリガミ(ドイツ語)が張ってある。
服を着ていても、あかぎれにわらが刺さって、チクチク痛い。
オレは星が瞬く空を見上げ、涙のにじんだ眼で、流れ星を見つめる。
忘れられない一夜になりそうだ(笑)
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